作家は本を書いているとき「作家脳」になっている ~「カラーバス効果」で本のネタを集める

「カラーバス効果」を知っていますか?

 心理学用語のひとつで、直訳すると「色を浴びる」という意味です。

 たとえば、「今日のあなたのラッキーカラーは黄色」と占いで言われると、1日中、

黄色いものが目に飛び込んできます。

 

 私は風邪をひいて薬局を探しているとき、町には、こんなにたくさん薬局があった

のかと思えるほどたくさんの薬局が目につきました。

 

 つまり、脳が意識した情報に敏感になるわけです。

 私は、これを「作家脳」と呼んでいます。

 

「作家脳」になるためには、まずは、頭の中にアンテナを立ててください。アンテナ

を立てないと、どんなにいい情報でもあなたの頭の上を素どおりしてしまいます。

 

 アンテナを立てると、本を読んでも、新聞を見ても、人と会って話しても、あなた

が書きたいテーマが知らないうちにどんどんキャッチされていきます。

「頭の中のアンテナ」で情報をキャッチしたら、必ず、メモしてください。

 そのメモが、あなたにお金と幸せをもたらします。

 

 私は大学を卒業してから、『週刊朝日』の編集部でフリーのライターをしていました。

 ときどき、グラビアの特集やニュース記事の取材もしていたのですが、ほぼ毎週書

いていたのは、「デキゴトロジー」という笑える街ネタを集めたコーナーで、すべて実

話に基づいて原稿を書いていました。

 私は友人・知人に会うたびに、「何か笑えるネタはない?」と聞いて回りました。

 笑えるネタは、だれでもひとつや2つは持っています。

 自分の失敗談でもいいし、親兄弟の体験談でもいいのです。

 

 たとえば、私はこんな話を週刊朝日に載せました。

「NTTで伝宝(でんぽう)さんという苗字の人が電報配達をしていた話」

「杉並区に住む吉田さんのうちに4人の子どもが生まれ、名前を上から順に、そうく

ん、ゆうくん、ことちゃん、かなちゃんと名づけた話」

 続けて読むと「そう、ゆう、こと、かな?」になります。

「おにぎりを作るとき、指をぺろっとなめて、ノリを巻いていたおにぎり屋さんの話」

 

 一見、くだらないと思えることも記事として掲載されたのです。

 こんな街ネタは、アンテナを立てるだけで、山ほど拾えました。

 1ヶ月で、私のメモ帳はぎっしり埋まりました。

 メモは私にとって貴重な財産でした。内容が直接、原稿料になったのです。

 

 もうひとつ、週刊朝日時代に教えてもらったことがあります。

 情報価値を高める方法です。

 

① 頭の中のアンテナにひっかかったたくさんの情報の中から、何が重要で、何が重

要でないかの選択をする方法。(情報の取捨選択)

② アンテナに引っかかった情報を単体で記事にするのではなく、、組み合わせたり、

体系化することで、より高い価値を作る方法。(情報の組み合わせ)

③ 情報はどの角度から見るかで、伝え方も伝わり方もまるで違う。

切り口変える、着眼点を変える方法。(情報の視点)

 

 その後、私は活躍の舞台を週刊誌から書籍に移しますが、戦場の最前線で身につけ

た「アンテナの立て方」と「情報価値を高める方法」は、本を書くときに他の作家よ

りだいぶ有利に仕事を進められました。

 私が数多くのビジネス書を執筆できたのも、週刊誌時代の下積みがあったからです。

 当時、アドバイスしてくれた編集者には今でも感謝しています。


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