本の値段がベストセラーの重要な要素になる
2016年04月25日
こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。
■企画書のなかでもっとも大切な項目は何か?
『企画のたまご屋さん』は、全国の出版社に、
(編集者1000名)毎日毎日、皆様の企画書を送っています。
著者に記入していただく企画書のフオーマットは、17項目あります。
●タイトル
●サブタイトル
●キャッチコピー
●本書の内容
●著者名
●著者プロフィール
●監修者
●監修者プロフィール
●企画意図
●企画の背景
●読者ターゲット
●類書
●類書との差別化
●体裁など
●企画者の要望
●この本を制作するために有利な条件
●制作期間
この17項目は、吉田が20年間かけて、
添付と削除を繰り返して考えだしたものです。
どんなに素人の著者でも、この17項目に沿って中身を埋めていけば、
あら不思議、プロ顔負けの企画書ができあがります。
さて、ここで質問です。
Q,この17項目のうち、もっとも大切なものはどれでしょうか?
A,9割以上の方が、「タイトル」と答えたのではないでしょうか?
正解です。
書籍の世界は、「タイトル8割、装丁2割」と言われるように、
本の売れ行きはタイトルで決まってしまいます。
(もちろん、内容がすばらしいことが大前提ですが)
それでは、さらに質問です。
Q,この17項目のうち、ベスト3を選ぶとしたらどれを選びますか?
A,さて、今度は、各人によって意見がバラけたと思います。
吉田は、もしあと2つ選ぶとしたら、
「企画意図」と「企画の背景」をあげます。
これを説得力をもってきちんと書いている企画は、まず、採用されます。
ここでひとつ、とても重要なアドバイスがあります。
「企画意図」とは、「なぜ著者がこの本を出そうと思ったか?」
という著者の意図ではありません。
「なぜ、この本が売れるのか?」
という理由を列挙しなくてはならないのです。
「企画の背景」とは、「なぜ著者この企画を考えたのか?」
という著者のバックボーンではありません。
「なぜ、この本が昨年でもなく、来年でもなく、
今年、出版されなくてはならないのか?」
という時代性を説明しなくてはならないのです。
ほとんどの著者が、「企画意図」と「企画の背景」を勘違いしています。
■定価が安い本がベストセラーになった!
さて、本題です。
企画書の17項目のなかで、「体裁など」を選んだ方は、
100人中ひとりもいないと思います。
「本の体裁」とは、
●本のサイズ
●ページ数
●横書きか縦書きか
●ソフトカバーかハードカバーかなどの仕様のことです。
そして、
●定価も、体裁に含まれます。
ベストセラーの条件に、「定価」というのは、
今までほとんど問題視されてきませんでした。
ところが、最近、「定価」が決定的な理由となり、
大ベストセラーが誕生しました。
『企画のたまご屋さん』で出版プロデュースした本で、
『世界の紛争地ジョーク』という本があります。
その本の著者である早坂隆さんが、別途、
『世界の日本人ジョーク集』という本を出版しました。
(どちらも中央公論新書ラクレより出版)
この本は今から1年前に出版されたのですが、
それほど大きな反響はありませんでした。
ただ、書店でも実売率が60%で、
かなり売れ行き好調だったそうです。
それでも、出版社の営業部は重版には慎重で、
ジョークの好きなコアファンが本を買ったら、
売れ行きも頭打ちになる、と思っていたそうです。
ところが、ジョーク集の売り上げは
半年たってもまったく落ちないのです。
ここにきて、関係者一同、「おやっ?」と思いました。
結果的に、日本人ジョーク集は、
大型書店の文教堂さんが目をつけ、
「ベストセラープロジェクト」の1冊にノミネートされます。
そして、文教堂全国200書店で大々的に販売したところ、
読者の支持を得て、堂々71万部のベストセラーとなりました。
Q,なぜ、当初、日本人ジョーク集が書店で売れ続けたのでしょう?
A,決定的な理由は「定価」です。
(もちろん、内容がすばらしかったことも当然の理由です)
これは吉田の独断的な私見ですが、
この本は新書だったからこそベストセラーになったのです。
もし、この本がハードカバーで、定価1500円の本だったら、
はたして書店で、実売率60%をキープできたでしょうか?
定価700円の新書だったからこそ、
読者も気軽に買えたのです。
早坂隆さんは、『企画のたまご屋さん』第1号の作家です。
心からおめでとうございます。
出版愛 吉田浩