今、「半径3メートル」の本が売れている!

2016年04月11日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

今回は、
「ベストセラーは、まさに、手を伸ばせば届く距離にある」
というお話です。

吉田は、2005年度から早稲田大学オープンカレッジにて
『週末ライター養成講座』という授業を教えています。

講座で、「ベストセラーの創り方」をテーマに取り上げ、
受講生全員に、最近読んだベストセラーを挙げてもらいました。
そして、50冊くらいあがったベストセラーについて、
共通項目を探すという授業をやりました。

すると、まず、男性、女性によって、
読む本の傾向が違うということがわかりました。

さて、ここでまた、問題です。

Q1,男性向けのベストセラーの傾向は、何でしょう?

Q2,女性向けのベストセラーの傾向は、何でしょう?

A1,男性は「お金」と「成功」

A2,女性は、「愛」と「癒し」 でした。

さらにに、ホワイトボートにびっちり書かれたベストセラー群から、
「本が売れる共通要素」を探っていきました。

そのとき、受講生のひとりが手を挙げて言いました

「お金も、成功も、愛も、癒しも、
すべて手を伸ばせば届くところにありますね!」

「あっ」と、私は声をあげました。

売れている本の中に、難しい本は1冊もなかったのです。
すべて、おもしろおかしく、わかりやすく書かれていたのです。

実用書やビジネス書だけではありません。
以前、世の中を賑わせた芥川賞の『蛇にピアス』や『蹴りたい背中』でさえ、
高校生活という、とても身近な世界を描いている作品です。

それでは、手を伸ばせば届く距離とは、
どのくらいの距離なのでしょうか?
講座では、その距離を数値で置き換えることにしました。

10メートル?
5メートル?

いろいろと意見は出たのですが、結局は、
多数決で「3メートルくらいだろう」と落ち着きました。

3メートルとは、ちょっと立ち上がって手を伸ばせば届く距離です。
生活空間に換算すると、
「6畳1間のワンルームマンション」なのです。

これは、本当に居心地がいい空間です。
朝起きてから、夜寝るまで、すべて3メートルの範囲内で賄えるのです。

この生活空間として最も快適な「3メートル」の範囲内が、
書籍の世界にも影響を及ぼしています。

そこで、また、問題です。
皆さん、ここ数年で大ヒットを飛ばした本や
著者の名前を頭の中で考えてください。

浅見 帆々子さん
本田 健さん
神田 昌典さん
佐藤 富雄さん
石井 裕之さん
斎藤 ひとりさん
中谷 彰宏さんなど、

たくさんの方が、「3メートル」内に入っていると思いませんか?

これから本づくりを目指す著者の方は、
売れる本を作るキーワードとして、
「半径3メートル」を頭の中のメモ帳にメモっておいてください。

ただし、「半径3メートル」の本にも欠点があります。

本当に、「手を伸ばせば届く所にある本」ばかりが世の中に出回ると、
人々がますますモノグサになってしまうのではないかということです。

手が届く範囲の生活は、居心地がよい反面、お手軽過ぎて、
人は努力することを怠ってしまうのです。

吉田は、書籍とは、
「すべての知識、技術、ノウハウ、エンタメが
集約されている究極の携帯パッケージ」
と、定義づけています。

書籍は「人類の英知の結晶」なのです。

長い人生、どこかで100メートルの全力疾走や、
42.195キロのきついマラソンコースも必要です。

マスコミで活躍している人、第一線級の研究者、その道の大家は、
必ず、人生のどこかで大量の汗を流しながら、
貴重な「オリジナリティ」を手に入れています。

そして、その付加価値を手にいれるために、
「努力」「根性」「一所懸命」な日々を送り、
読者に感動を与えているのです。

そういう、渾身の一冊と巡り合いたいと思い、
吉田は、今、出版プロデューサーという日本初の
仕事をしています。

次回は、この「半径3メートル」本の続きです。
いかに、「おもしろく、やさしく、わかりやすい本」を作るか、
そのノウハウを説明しますね。

次のキーワードは、「民度を落とす」です。
「みんど」って、何でしょうか?

出版愛 吉田浩