自費出版はブランド価値を落とすこともある

2020年07月28日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■その300万円、もったいない!

吉田は、よく、経営者の出版記念パーティーに招かれるのですが、
そこで、大手出版社から自費出版で本を出した方が
たくさんいるのでびっくりします。

中には、1千万円も支払って、本を出した経営者もいます。

「えーっ、1千万円も出して、本を出版するメリットってあるの?」

と、いう声が聞こえてきそうですが、
答えは、YESです。

どんなにお金を払っても、出版する価値は確かにあるのです。

だいたい、自費出版の会社が設定している料金は、
フルコースで300万円が多いようです。

まず、自費出版のメリットですが、実は、これが数えるくらいしかありません。

1、お金を払えば、だれでも本が出版できる。

2、お金を払えば、どんな本でも出版できる。

3、お金を払えば、どんな書店にも置いてもらえる。

4、お金を払えば、有名な出版社からも本が出せる。

吉田は、この4つしか思いつきません。

えっ、たった、4つ?

これ以外にありますか?

もしかして、ないんじゃない?

「お金を払っているお客さんの要望を100%聞いてもらえる」
というのが、もしかして自費出版の最大の利点ではないでしょうか?

そのほか、

・全国の書店で本を注文することができる。

・出版によって会社、著者の知名度が高まる。

・出版によって、商品のセールスができる。

・見込み客の集客ができる。

・新入社員が集まってくる。

など、20くらい列挙できるのですが、それは、
すべて自費出版でなくても達成できます。

■自費出版の前に立ちはだかる大きな壁

自費出版には、メリットもある反面、大きなデメリットもあります。

次は、自費出版のマイナスポイントについて説明していきましょう。

1、ブランディングとしてはマイナスになることも。

自費出版の会社は、今やだれでも知っています。
ですから、その版元から出版して、本を宣伝しても、
「お金と交換に出版してもらった」というイメージは払拭できません。
逆に、著者のブランド価値を落とすだけです。

2、編集のプロがノータッチ。

商品として「自費出版」を売る出版社もあります。
社員はすべて営業マンで、編集者はほとんどいません。
(存在していますが、名ばかりです)
本の制作は、外部に丸投げしています。
ですから、どう考えてもいい本ができるとは思えません。

3、あまりにも品質がおそまつ。

自費出版を商品として勧めている版元の場合、
利益を出すために、とにかくコストカットに努めます。
本作りのすべての過程において、最低レベルのクオリティで作ります。
そんな、出版社もあることも事実です。

本のカバーデザインや本文中のデザインも、
あまりにもレベルが低くて話になりません。

4、著者の経営課題の解決にはつながりません。

出版によって、著者の自己実現や経営課題の解決が達成できます。
ところが、出版社は、著者の抱えるいろいろな問題にはノータッチです。

5、全国の書店に流通しない本もあります。

その出版社が常備契約している書店には置かれますが、
それ以外の書店にはまるで配本されないというのが、
自費出版です。

常備契約している書店は、版元によって、
数百店の場合もあれば、数十店の場合もあります。
また、G社さんのように、全国に1万冊バラまくという出版社もあります。

6、自費出版本の多くの運命は「裁断」です。

たとえば、ある出版社の場合、初版3000部で、
著者に1500部を渡し、残りの1500部を全国配本しています。

ところが、自費出版は書籍の返本率が高いため、場合によっては、
作った本の9割が回収されて、裁断されるということも起こりえます。

あまり怖がらせるつもりはありませんが、
自費出版と商業出版は、天と地ほども、
作り方と売り方が違うということをご理解ください。

以前、吉田は、書店で、
ある自費出版の版元から2004年に出た本を手にしました。
中身をパラパラとめくってみて、とてもびっくりしました。

なんと、たった5年で紙が劣化し、薄茶色に変色していたのです。
思わず、「これは、ひどい……」と感歎しました。

素人は騙せても、同業者がみれば一目瞭然です。
その版元が使っている紙質は最低レベルのものだったのです。

また、自費出版専門の会社は、コストダウンのために、
装丁にもお金をかけていません。

30年前の本のように、古臭くて、ダサい感じの
表紙になってしまうこともあります。

もし、あなたが生涯をかけて書いた大事な本が、
そんな劣悪なパッケージになったら、どうしますか?

そこには、やはり、商業出版と自費出版の大きな壁が存在しているのです。

自費出版は、どうしても本が出したい人には、大いなる福音です。
しかし、その裏側には、低コストゆえのデメリットも
あることを、よくよく理解してください。

出版愛 吉田浩