時代に迎合しない本が、逆に、ベストセラーになる

2020年03月19日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■書籍はエネルギーの塊だ!

過去にベンチャーリンクさんで講演をさせていただきました。

このときのスペシャルゲスト講師は、サンマーク出版の植木宣隆社長です。

サンマークさんは、日本一効率よくベストセラーを出している出版社です。
年間60冊くらいの本を出し、そのうち1/3がベストセラーになっています。

その秘密はどこにあるのでしょうか?

植木社長の話の1部を、ここで紹介させていただきます。

もともとサンマーク出版の「サンマーク」という意味は、
「太陽の印」という意味です。

太陽は超巨大なエネルギーの塊で、
何十億年もの間、核融合を起こし、内部から燃え続けています。

そして、地球に住むすべての生き物が、
太陽のエネルギーの恩恵を受けて生かされているのです。

サンマーク出版は、その熱エネルギーを想念のエネルギーに変えて、本を作っています。

書籍は著者と編集者の燃えるような
想念のエネルギーが注がれてできあがった結晶なのです。

植木社長は、こう言っていました。

「1冊の本にどれだけのエネルギーを注げられるか、がすべて。
そのためには、著者も編集者もエネルギーをマックスにする必要がある」

著者だけでもなく、編集者だけでもなく、
両者の熱意がひとつになることが大切なのです。

そのためには、編集者は妥協してはいけません。
編集者は常に、戦わなければいけません。

著者に対しては、文章がダメならはっきりと、「ダメ」という必要があります。

また、装丁家やデザイナーとも戦わなければいけません。
デザインが悪ければ、何度でも「ダメ出し」をする勇気が必要です。

本気で著者と向き合わなければ、いい本はできません。

現在、出版点数のノルマに追われ、
流れ作業的に安易に本を作る傾向がありますが、
それを戒める、厳しく愛情のあふれる言葉です。

実は、これ、メインの講演会ではなく、
2次会の飲み屋で聞けた貴重な話です。

■ない、ない、ない、づくしでベストセラーを創る

サンマーク出版さんは、他の出版社と決定的に違うことが3つあります。

1つ目は、「流行を追わない」ということです。

2つ目は、「人まねをしない」ということです。

3つ目は、「売れている著者を使わない」ということです。

説明します。

1、「流行を追わない」

通常の出版社は、世の中の流行を分析し、
時代の風潮にあった本を出版したがります。

また、常に、周りの出版社の動向に目を配っています。

ところがサンマークさんは、
「市場を見るな」
と、真正面からいうのです。

「自社がやっていることに自信があるならば、
周囲を気にする必要はまったく無い」というのです。

売れている市場に後から参入するのではなく、
売れる市場を自ら作り出すことが第1の使命なのです。

本が売れないといわれている日本で、
これほど孤高の思想を持っている出版社がどれだけあるでしょうか。

吉田は心の底から感動しました。

2、「人まねをしない」

サンマーク出版は、二番煎じを出さない出版社です。

社内に、「サンマークカルタ」というカルタがあるそうです。

このカルタで、出版ルールのイロハを教えています。

「や」の言葉は、
「柳の下にドジョウ」ではなく、
「柳の下に金魚」です。

要するに、「柳の下にいる2匹目のドジョウを狙わない」ということです。
なおかつ、「自ら金色に輝きなさい」ということなのでしょう。

昔、吉田はサンマークさんを訪問したとき、
いきなり植木社長に「ひとまねして本を作ってはいけないよ」と、
なぜか、小1時間説教されたことがあります。(笑)

3、「売れている著者を使わない」

昔お世話になった編集長に、以前、吉田はこう言われました。

「吉田さん、もう、うちは、新人の著者の本は出しません。
これからは、他で売れた著者の本を出します」

気持ち的には、100%わかります。
しかし、尊敬していた編集長からハッキリそういわれて、吉田は口を空けてしまいました。

サンマーク出版は、
「今、売れている著者を引っ張ってきて本を作る」
という手法は取っていません。

「あるジャンルで最高の仕事をした人を引っ張ってきて、
その方に、最高の本を書かせる」
という出版の基本を愚直に実行し続けているだけなのです。

また、サンマーク出版で本を出した著者は、
2冊目を他の出版社から出さない、といわれています。

それは、なぜか?

著者の生涯最高の1冊を出してくれる出版社だからです。
そして、その本を、ベストセラーにしてくれるからです。

前述したとおり、書籍はエネルギーの塊です。
「最高の成果を出すために、とことん本作りを基本に沿ってやるだけ」

自分の世界で最高の仕事をしている人は本が書けるし、
その本は、読者から支持されます。

これは、基本といえば、基本です。
しかし、その基本を忘れている編集者が多いのも事実です。

常に売れる市場だけに目を向けていた吉田も、
「流行を追わない」という一言に、ガツン、と丸太で後頭部を殴られたような感じです。

現在、多くの出版社の多くの編集者は、
「出版ノルマ」に追われて、自ら著者発掘する時間がありません。
その結果、

「流行を追わない」→「流行を追いまくる」
「人まねしない」→「人まねしまくる」
「売れている著者を使わない」→「売れている著者を使いまくる」

「ない」から「まくる」になるのも仕方ありません。

今回、吉田は、植木社長からプレゼントをいただきました。
それは、「著者発掘の大切さ」や「時代に迎合しない本作り」です。

「出版の基本」という大事なマインドを、改めて考えさせられました。

出版愛 吉田浩