編集者の口車に乗ってはいけない

2020年01月29日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■「何でもいいから売れる本を書いてください」

企画を採用してくれる編集者は、
著者にとっても、当社にとっても宝のような存在です。

しかしながら、今回はその編集者さんが読んだら、
激怒するかもしれない内容をあえて書かせていただきます。

(最初に、謝っておきます。編集者さん、ごめんなさい)

まず、あなたが本を出して、その本が売れたとします。
すると、あなたの周りには、
「うちからも本を出してください」
と、たくさんの出版社の方が現れるでしょう。

さて、ここで注意していただきたいのは、このようなオファーすべてに対して、
100%引き受けてはダメだということです。

その理由は、

1、編集者はあなたの才能やテーマに惚れ込んで近寄ってきているのではない。
 あなたが売れる本を書けそうだから、声をかけてくるケースの方が多い。

2、出版社独自のオリジナルな提案してくるのではない。
 先に売れた本の2番煎じの本を依頼してくることが多い。

3、出版社の目的は、あなたのブランディングのために本を書いてほしいのではない。
 自社の利益のために売れる本を書いてほしいだけ。

どの出版社から、2作目、3作目を出すかは、十分に注意しなくてはなりません。

特に、このような台詞を言う編集者は、要注意です。

「なんでもいいから、売れる本を書いてくださいよ。」

実は、こういう出版社は非常にたくさんあります。

出版社の社長さんと飲んでいるときにも、同じことを言われます。

「吉田さん、うちは、とにかく、売れればいいんですよ」

気持ち的には、とてもよくわかります。
その通りです。
売れない本は、犯罪です。

でもね、
編集者としては、この言葉は、絶対に使ってはいけないと、吉田は思うのです。

■編集者のいいなりにならないで

NPO法人企画のたまご屋さんの使命は、
出版の裾野を広げ、日本中から優れた才能を持つ著者と売れる企画を探すことです。

そしてこの目的は、出版社の編集者も同じだと思うのです。

吉田は出版コンサルを生業としていますが、口が裂けても
「何でもいいから、売れる本を作りましょうよ」とは絶対に言いません。

逆に、著者にはこんなことを提案します。

「まったく売れないかもしれませんが、
あなたが生涯かけて書く本のなかで、最高の一冊を作りましょうよ」と。

実際に、このコンセプトで吉田が作った本もたくさんあります。
ものすごく、本の名前を出したいのですが、出せません。

たった今、いい本だけど、「売れてない」と言ってしまったからです。

時代に迎合しない、読者に迎合しないため、売れ行きは悪いです。

しかし、絶版にはなりません。

なぜなら、その作家のファンがきちんとその作家性を理解し、
支持してくれる本になるからです。

また、吉田は出版コンサルをしていて思うのですが、
著者が会社経営者だった場合、
ほとんどの著者は経営問題の解決のために出版を望んでいます。

経営課題とは、すなわち集客だったり、セールスだったりします。

ところが、出版社が求めているものは違います。
出版社が求めているものは、まず、売れることです。

その目的が第一番にくると、あなたの会社経営にプラスになることは、
場合によってはすべて削除されてしまうこともあります。

このとき、出版社と著者との間で対立が起こります。
そして、ここでお互いに歩み寄ると、お互いに一番悪い結果となります。

本が売れて、著者のブランディングに役立つのではなく、
本がさっぱり売れず、経営者もなんのために書いたのか
わからないような本ができてしまうのです。

編集者の言うとおりにしていれば、ある程度売れる本はできるかもしれません。
そして、本が売れたことで、会社の知名度を上げることにつながることもあります。

ただ、吉田の経験から言わせてもらうと、
妥協した本ではなく、どちらか一方が「わがまま」を通して
作った本のほうが、明らかに売れています。

今回のブログで、吉田が言いたいことをまとめます。

著者は、強い意思を持って本を書いてください。

1、自分はなんのために本を出すのかを、真剣に考える。
2、著者は誰に本を読んでもらいたいのかを、真剣に考える。
3、著者は読者にどんなふうになってもらいたいかを、真剣に考える。
4、そして、時間をかけて、1、2、3の著者の思いを理解してくれる出版社選びをする。

そのときには、出版社の条件にはこだわってはいけません。

たとえ、印税が安くても、支払いが実売部数でも、
あなたの本を出したい本を出してくれる出版社は神様だと思ってください。

そして、その出版社の恩に報いるためにも、本が出たら、
著者自身の手で一冊でも多く本を売ってください。

吉田は、これが本当の出版の王道だと思っています。

くれぐれも、
「今すぐ売れる本を、今すぐ作ってください」
という編集者の口車に乗ってはいけません。

出版愛 吉田浩