なぜ、類書研究が必要なのか?

2019年05月23日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■類書と比較するとたくさんのことが見えてくる

今回のブログのテーマは、「類書研究」です。

たまご屋さんの企画書作成の手順に、「類書」という項目があります。
さらに、そのあと、「類書との差別化」という項目もあります。

類書は一見、軽く考えられがちですが、
実はこれが重要な意味を持ち、本を作るときにあなたを助けてくれます。

Q,自分の本を書くのに、なぜ、他の人の書いた本なんか調べなければならないのでしょうか?
 他の人の書いた本なんて私には関係ないし、いちいちそれを調べるなんて面倒臭いんです。

A,確かに、類書研究は、時間と手間がかかります。
 しかし、類書研究は、絶対に手を抜いてはならないのです。
 その理由は、以下の通りです。

1,まったく同じタイトルの本が出ている可能性があります。

たとえば、「最強の営業術」とか、「きっと、うまくいく」とか、
「話す技術」など、自分ではオリジナルだと思っていても、
どこかで誰かが、似たようなタイトルをつけていることがあります。

2,まったく同じ内容がもっとうまく書かれていることがあります。

まったく同じ内容だと、本を出す意味がありません。
他の人の二番煎じでは、魅力も半減します。
同じ内容の本があったら、必ず、それを超えるクオリティの本を作り上げる必要があります。

3,類書の多寡によって読者ニーズがわかります。

たくさん類書が出ている本はそれだけたくさん読者の需要があると考えて間違いありません。

たとえば、「コミュニケーション」で検索すると、なんと6万冊以上の本がヒットします。

ということは、コミュニケーションを必要としている人は
いつの時代でも、何十万人、何百万人もいるということです。

逆に、類書がほとんどないということは、需要がないのかもしれません。
本を出しても、全然売れない可能性があります。

4,売れている類書があると企画書が採用されやすくなります。

著者は「類書がたくさんあると、編集者は本を出してくれないのではないか?」と考えますが、
むしろ編集者は「類書がたくさんあるということは、需要があるに違いない」と考えます。

採用される企画書の裏技は、
「このテーマには、あんな類書があり、その類書は10万部売れています」
と、類書の発行部数を記入することです。

5,類書の売れ行きを調べることによって、同じテーマでもどんな本が売れているかがわかります。

パブライン(大型書店の本の売れ行き)を調べることによって、
どの本が一番売れているかがわかります。
たとえば、紀国屋書店全店で500冊売れた本があったなら、計算式はこうなります。

500冊×20倍=1万冊≒全国の書店で売れた数

ここで特筆すべきは、売れてない本も調べることができるということです。
いい本なのにほとんど売れていない本があります。
その原因を究明し、同じ轍を踏まないことが大切です。

6,自分が本当に書きたい本の内容が見えてきます。

たくさんの類書を比べて見ることによって、
今まで著者自身も気が付かなかったテーマが見えてきます。

「そうそう、この内容を書きたかったんだよ」
「私なら、もっとここに焦点をあてて書くな」
書きたいことがどんどん増えてきます。

類書研究は時間がかかると思っているあなた、実は、それは逆なんです!

類書研究をしないと、あとからもっと苦労して、何倍も時間を浪費してしまうのです。

7,書けない内容、書きたくない内容もわかります。

人間だれでも、得手不得手があります。
「あっ、私は、この分野は苦手だ」とわかること、コレは重要です。
類書研究によって、知らないこと、経験してないことが自然と排除されるだけでもずいぶん助かります。

8,本のタイトルの参考になります。

本を作るときに、一番頭を悩ませるのがタイトルです。
たくさんの類書のタイトルを見ていると、そのうち、ピーンと来るものがあります。
類書は、あなたに「気づき」を与えてくれます。

このタイトル付けは、大きな暗い森のようなものです。
タイトルがわからないと、森をさまよい続け、いつまで経っても迷路から抜け出せないのです。

9,これは、ちょっと吉田が秘密にしておきたいことなんです。
出版コンサルを申し込んだ方だけに教えていることがあります。

とても重要なことなんですが、ここで説明してもわかってもらえるかどうか……。
また、長くなるので、ここで書ききれないのです。

最後に。

類書研究は地味な作業です。
しかし、必ず、行ってください。
類書研究をしないと、本を一生懸命書き上げたのに、
すべてパーになってしまう可能性だってあるのです。

出版愛 吉田浩