トラブル発生! 本が書けない!

2019年03月12日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■現金と原稿は顔を見るまで信用するな

これは、吉田の尊敬する編集プロダクションの社長の座右の銘です。

「現金と原稿は顔を見るまで信用するな」

仕事で、よほど苦労されたのでしょう。

その社長は、著者の「今、書いています」
「もうすぐ書き終わります」を信じていません。

著者の言い訳は、そば屋の出前と同じです。
配達が遅いとクレームの電話をかけると、
店長は「あっ、今、出ました」と言いながら、
慌ててそばを茹でるというわけです。

原稿料もそうです。
現在、老舗出版社の倒産が相次いでいます。
実際に、あなたの銀行口座に振り込まれるまでは油断大敵なのです。

吉田は34年間、出版プロデューサーをやっていますが、
企画が採用されたあとも、
「現金と原稿は顔を見るまで信用するな」は鉄則です。

それでは、企画採用後に出版中止になった
過去の事例を紹介していきましょう。

■10冊に1冊はトラブル発生!

これは、吉田の大雑把な感覚ですが、採用された企画書のうち、
10冊に1冊はなにかしらのトラブルに巻き込まれます。
(逆に言うと、10冊に9冊はスムーズに出版できるというわけですね)

それでは、どんなトラブルに巻き込まれるか、
具体的に説明していきましょう。

・著者が編集者の意見を聞かない。
出版トラブルの約8割がコレです。
著者の書きたいことと、編集者の作りたい本が
途中で噛み合わなくなることがあります。

その際、お互いに歩みより、
内容の修正をしなくてはならないのですが、
絶対に書き直さない著者がいます。

著者のプライドが異常に高かったり、ある種の信念を持っている場合、
編集者と衝突して、出版が中止になることがよくあります。

・出版社が倒産した。
最近、一番多いケースです。
倒産の前兆は、「原稿料の支払いが遅れること」、です。
一度支払いが遅れた出版社は、2年以内に約8割が倒産します。

・編集者が辞めた。
編集者もサラリーマンです。
企画を採用してくれた編集者が突然、会社を辞めて、
企画が宙ぶらりんになることもあります。

・出版条件が違った。
企画書が採用されたときには、印税率は10%だったのに、
本が出るときには、印税率が5%になったという事例もあります。
理由は、出版社が左前になった、
完成原稿がひどいので発行部数を半分にした、などです。

・著者に1冊の本を書く実力がなかった。
企画書は書けるが、本が書けない、という著者もいます。
内容が平凡で、読んでいてもつまらないことはよくあります。
テーマにつまって書けない著者もいます。

・とにかく、文章がひどい。
ごくたまにいます。自己流の文章、文体で書き殴ってくる方が。

・出版の決定権が編集者になかった。
通常、出版社の編集者はそれぞれが独立して企画の決定権を
持っていますが、中には、実力不足の編集者もいます。

本を書き終わったあとで、出版中止になることがあります。
理由は、
「営業部が、この本は売れないと言っている」
「編集長が出版するのを反対している」
「社長がダメ出しをした」などです。

・著者が病気になった。
これも、ときどきあります。
特に多いのが、うつ病です。
シメキリに追われて、書くことがプレッシャーとなり、
ノイローゼ状態になることがあります。

・いろんな人がいろんな意見を言う。
本の執筆過程で、「ああしたほうがいい、こうしたほうがいい」と、
編集者や編集長がいろいろと意見を言うことがあります。
そのたびに、著者は書き直しをするのですが、
結局は、テーマがバラバラ、内容もバラバラの本ができてしまいます。

これは、本当に出版プロデューサー泣かせです。

皆さん、いい本を作ろうと意見を言うのですが、
何度も何度も書き直しをしているうちに、
方向性が見えなくなってしまうのです。

・著者がシメキリを守らない。
本当に、シメキリギリギリになるまで、原稿を書かない著者がいます。
あるいは、イラストをお願いしたイラストレーターがさぼって、
シメキリを大幅に遅らせることもあります。

・盗作をした。
レアケースですが、これもごくたまにあります。
文章を書くときに、ネットから引用して、
その文章を数行、そのまま使ったという事例が増えています。

著者にはその気はまったくなくても、
たくさんの資料を集めているときに、
他人の文章か自分の文章か、わからなくなってしまうのです。

・出版の時期を逃してしまった。
たとえば、ビールの本は、夏に出ないといけないのに
原稿ができあがったのが秋では、話になりません。

その他、出版トラブルは枚挙にいとまがありません。
特殊なケースですが、それも紹介しましょう。

・企画が採用されたのが1年後で、著者がやる気をなくしてしまった。

・暴露本だったので、著者の周囲の人たちが大反対した。

・共同執筆者同士が仲が悪くて途中でケンカを始めた。

・制作を請け負った編プロが何もしない。

・原作者が原作を書かない、などなどです。

さて、次回は、トラブル回避の方法を紹介しますね。

出版愛 吉田浩