「切り口」を変えるだけでベストセラーが生まれる
2017年10月19日
こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。
■書籍が流行を作り、世の中を変える
以前、流行語大賞の授賞式を見にいきました。
そのときに、吉田は出版人として、2つのことに気が付きました。
まず、最初の気付きは、
「あれっ、本のタイトルが流行語になっているの?」
ということです。
2007年の流行語トップテンに
2つも書籍のタイトルが入っているのです。
『鈍感力』(渡辺淳一)と
『ネットカフェ難民』(川崎昌平)です。
その前の年のトップテンにも書籍が3つ入っています。
『品格』(藤原正彦)と
『格差社会』(山田昌弘)と
『脳トレ』(川島隆太)です。
書籍が100万部売れても、テレビの視聴率に換算すると、たった1%です。
たった1%でも、国民に支持された本が流行語になるわけです。
書籍の社会的な影響力はないと思われがちですが、
本作りに関わっている編集者やライターにとって、
これはとても朗報なのではないでしょうか?
もうひとつ、気付いたことは、
「あれっ、昨年の流行が続いているなあ?」
ということです。
2006年の大賞候補に、斎藤佑樹選手の「ハンカチ王子」があります。
そして、2007年の大賞が、「ハニカミ王子」です。
2006年の大賞に「品格」(『国家の品格』)があり、
2007年、一番売れた本が『女性の品格』(坂東眞理子)でした。
Q,なぜ、このような現象が起きるのでしょうか?
A,日本人は、ひとつの対象に飽きたら、次の対象に目を向けるからです。
1,もともと日本人は流行に飛び付きやすく、
2,非常に移り気な国民性です。
3,そして、自主性がないことと、
4,損をしたくない性格のため、
5,流行りものに価値を感じてしまうのです。
日本人は、ひとつの興味の対象が円熟期を迎えたとたん飽きてしまいます。
そして、次の対象を探します。
「国家の品格」 →「女性の品格」
「ハンカチ王子」→「ハニカミ王子」は、まさにその典型ですね。
■書籍の「切り口」とは「読者ターゲット」のこと
流行は常に動いているのですが、
まったく違う形に変貌するのではなく、
ゆるやかに形を変えていくのです。
出版業界のベストセラーもそうです。
1冊目が当たると、次々と似たような本がでます。
そして、2作目、3作目も売れるのです。
この法則を、吉田は、「ベン図方式」と名付けました。
(「ベン図方式」については、過去のブログの
「ベン図方式なら必ずベストセラーが出る!」で詳しく書いてあるので
興味がある方は参照してください。)
ひとつの大きな円(興味の対象)が市場としてできあがったとき、
その市場が食い付く次の対象を作って与えると
人はいとも簡単に、パクリと食い付いてしまうのです。
ベストセラーでもその図式が成り立ちます。
今売れている本の「切り口」を変えて出版しただけで、
そこそこ売れている本が、いきなりミリオンセラーになったりします。
Q,では、本の「切り口」とは何でしょうか?
A,「切り口」とは、たとえば「読者ターゲット」のことです。
本によっては、「タイトル」だったり、「著者」だったり、
「テーマ」だったり、「構成」だったり、
「図表」だったり、「ビジュアル」だったりしますが、
一番単純で、最大効力を発揮するのが「読者ターゲット」の変更です。
『国家の品格』が男性向けだったのに対して、
『女性の品格』は女性向けです。
「口ぐせ理論」で一世風靡した佐藤富雄先生の本も、
かんき出版では、男性をターゲットにしいて、
5~7万部くらいしか売れませんでした。
ところが、全日出版で女性をターゲットにしたとたん
ミリオンセラーになりました。
ミリオンセラーメーカー、五木寛之さんの本もそうです。
青年から高齢者まで、読者ターゲットを本ごとに
「スライス」して提供しています。
理論としては単純です。
ターゲットの読者が本を購入すれば、
すでに、その読者層は飽和状態になっています。
次の、ターゲットにシフトしなければいけません。
吉田は、出版プロデューサーとして、今、
何人かの有名作家さんの書籍を企画から
プロデュースさせていただいています。
そして、常に、その作家の「切り口」をどう変えたら
ベストセラーになるかを日々考えているのです。
出版愛 吉田浩