神社でお守り、トヨタでトヨタ本
2016年09月26日
こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。
■発行部数3800万部という冊子があった!
吉田が「最近、本が売れなくてね」とこぼしていたら、
ある編集者から、こんなことを言われました。
「年間3800万部読まれている冊子があるよ」と。
「それは、ハリーポッターですか?」
「違います」
「じゃあ、聖書でしょう?」
「違います」
「時刻表かな?」
「違います。海外でもなく、累計でもなく、
日本国内で1年間で3800万部も発行されているんです」
さて、ここで質問です。
Q,2006~2007年の間、日本で一番読まれた冊子はなんでしょうか?
A,通販誌の「ニッセン」です。
ちょっと、びっくりしませんか?
通常、本の発行部数は5000~7000部くらいです。
その100倍より、1000倍より、もっと多く発行されているのです。
私は驚きながらも、大変興味を持ちました。
「どうやって読者の手元に届けているんだろう?」
何百ページもある分厚い本を郵送したら、
郵送費だけで何十億円にもなってしまいます。
Q,では、どうやって冊子を読者の手元に届けているのでしょうか?
A,コンビニのレジにて、無料で配布しています。
なんと、店へのキックバックが1冊50円あるそうです。
1000冊配ったら5万円入ってくるので、
店長にとってはいい小遣い稼ぎなのです。
「ははあ、世の中には頭のいい人がいるんだな」
と、吉田は深く感心しました。と、同時に、
「そうだ、本だって、本屋で売らなくてもいいかも」と思いました。
■本を書店以外で売る時代がやってきた
<本は本屋さんで売らなくてもいい>
この視点で、もう一度、書籍の売り方を見直してください。
さまざまな発見があるはずです。
たとえば、全出版物の2割はコンビニで売れているそうです。
もちろん、コンビニは本屋さんではありません。
また、パソコン書の6割は、ビックカメラやコジマ電気など、
大型電気店のパソコンコーナーで売れています。
現在、大型電気店のほとんどがポイントカード制を導入し、
商品の購入代金の10~15%を還元しています。
たとえば、10万円のパソコンを買った顧客は、
1万円以上の「商品券」をもらったのと同じなので、
そのままパソコン書売り場に行って、まとめ買いをする人も多いそうです。
コンビニや電気店の例で証明されたように、
「本屋さん以外で売れる本を作ろう」
と計画するのは、もはや時代の趨勢かもしれません。
天才工場で作った、
『マンガで3時間でわかる がぶり! トヨタ』(明日香出版社)は、
トヨタ市で一番売れています。
もちろん本は書店で売られているのですが、ここで私が言いたいのは、
「トヨタ市だから、トヨタ本が売れる」という事実です。
Q,なぜ、トヨタ市でトヨタ本が売れるのでしょうか?
A,トヨタ市には、20万人のトヨタ社員がいるからです。
吉田は、書店以外で本を売るこの方法を、
「神社でお守り方式」と名づけました。
日本全国の神社に行くと、たいてい「お守り」を売っていますね。
つまり、「お守り」は神社に置けば、間違いなく売れるのです。
同じように、書籍も「置き場所」によって売れる本があるのです。
具体例を紹介しましょう。
2003~2004年頃、天才工場が制作協力した本で、
『フィットネス宣言』(生活情報センター)という本があります。
この本は、書店ではなく、フィットネスクラブで売れました。
全国の「ティップネス」の受付に置いてもらったのです。
もともと出版社がタイアップを持ちかけたのですが、
ティップネス側にとっては、自社のイメージアップになるし、
同業者との差別化ができます。
また、書籍を出版することによって、会員の信頼も得られます。
全国14万人のティップネス会員は、受付を通るたびにこの本を目にしました。
本が売れないわけがありません。約1割の会員が書籍を購入したのです。
これは、「神社でお守り方式」で成功した典型的な例です。
みなさんも、本屋さん以外で売れる本を企画してくださいね。
<吉田浩のベストセラー道場・臨時増刊号>
◆出版業界の謎
~出版業界の大疑問、不思議発見~
今回は、特別企画「出版業界の謎」を発表したいと思います。
この内容は、2006~2007年、業界紙「新文化」にて発表したところ、
数十人の読者から「もっと内容を教えてほしい」と連絡がありました。
業界紙としては、異例なことでした。
それでは、「出版業界の謎」行きます!
●謎1
直木賞は芥川賞より有名です。
しかし、芥川龍之介の小説はたくさん知っているけど、
直木三十五の小説なんて、だれも知らないのは、なんで?
そもそも、「さんじゅうご」なんて、ペンネームは読めないよね。
●謎2
書籍や雑誌の「発行部数」がとんでもなくインチキなのはなんで?
テレビ業界はどんぶり勘定の世界だけど、小数点以下まで視聴率を出しています!
●謎3
最高裁判所で敗訴して名誉毀損が確定しても、
出版社の社長が引責辞任をしないのはなんで?
いま、話題の『白い恋人』のように、
メーカーならば「不良品出荷」で責任を問われるのに……。
●謎4
新聞の出版公告に「重版出来」っ載せるのはなんで?
「増刷されました」と書けばいいのに。
●謎5
ベストセラーは10万部以上と、暗黙の了解で決まっているのはなんで?
●謎6
契約を結ばないで執筆依頼をして、本ができた後で契約を結ぶのはなんで?
「出版業界って、本ができたあとで、出版社と著者とが契約を結ぶんですよ~」
と、言うと、他の業界の人々は100%、「絶対に、ウッソ~!」と言います。
ウソではありません。ホントウですよ。
●謎7
著者に入ってくるお金を「印税」というのはなんで?
そもそも「印税」って、だれが、いつ、10%と決めたんでしょう?
●謎8
本の発売日や発行日が、実際と全然違うのはなんで?
●謎9
文学賞の応募に「年齢、職業、経歴」を書かなくてはならないのはなんで?
本来、文学は、そんなものとは無関係なのに。
●謎10
出版業界にセクハラが多いのはなんで?
●謎11
ここ30年間、銭湯の料金は5倍にも10倍にもなったのに、
ずーーーーーーーっと、原稿料がアップしないのはなんで?
●謎12
たくさんのライターが「夢の印税生活」にあこがれて出版業界に入り、
みんな本当に「夢」で終わってしまうのはなんで?
●謎13
出版社はがんがん、ビルを建てています。
作家も、ときどきそんな人がいます。
でも、編プロが「ビルを建てた」という話を一度も聞いたことがないのはなんで?
●謎14
編集者は、本来、お金を払ってくれる読者に頭を下げるべきなのに、
「作家」や「先生」に頭を下げるのはなんで?
●謎15
御年100才近い日野原重明先生が、毎日徹夜して、
ばんばん原稿を書きまくれるのはなんで?
●謎16
芥川賞と直木賞の選考委員会が、いつもいつも
料亭「新喜楽」で開かれるのはなんで?
●謎17
他の業界はちゃんとマーケティングして細かいことを決めているのに、
出版業界は、かなり適当に、タイトルや定価や発行部数を決めるのはなんで?
●謎18
出版社に勤務しているのに、未だに「私はパソコンが使えないので、
バイク便でフロッピーを送ってください」という編集者がいるのはなんで?
●謎19
さらに、メールアドレスが名刺に書いてあるのに、
「私はメールは見ません!」と胸を張って言う
おじさん編集者がたくさんいるのはなんで?
●謎20
吉田が「シメキリは8月末ですよ」と言っているのに、ライターさんが、
「わかりました。で、本当のシメキリはいつですか?」と聞いてくるのはなんで?
「だから、8月末だって、言っているじゃないか!」
このあと、ネタは180本続きますが、今日は、このへんで……。(笑)
出版愛 吉田浩