何かを「教える」とき、人は一番幸せを感じる ~なぜ、人は本を書くのか?

吉田松陰は、本を読むことの大切さをこう述べています。
「万巻の書を読むにあらざるよりは、いずくんぞ千秋の人たるをえん」

 

たくさんの本を読めば、世に名を残すような立派な人になれるということです。

 

吉田松陰が松下村塾をやったのは、たった2年です。
その塾生から日本を動かす幕末の志士たちが生まれました。
古いものから新しいものに脱皮するときには、時間は関係ないのです。
吉田松陰は、倒幕の容疑をかけられ牢屋に入れられたとき、どんな大悪党でも先生と呼び、
ひとりひとりの罪人に講義をしてもらったそうです。斬首されるために牢獄から出るとき
には、大悪党たちがみんな正座して見送ったという逸話もあります。

 

「人間は一生に一冊は本を書きなさい」
と言ったのは明治生まれの哲学者であり、教育者である森信三さんです。
本を書いたほうが、さらに人生に深い価値が生まれるためです。
森信三さんは「国民教育の師父」「20世紀最後の哲人」と呼ばれ、彼の講演録はたくさん
の本となり、今なお、たくさんの経営者がその教えを実践しています。

 

なぜ、人は本を書きたいと思うのでしょうか?
人は、だれかに何かを教えたい生きものなのです。

 

そこには、自己顕示欲もあれば名誉や賞賛を得たい気持ちもあるでしょう。
しかし、人に教えたいのは、人間の持つ基本的な欲求のひとつです。
もっとわかりやすくいうと、「教えてもらいたい」より「教えたい」という欲求が強いの
です。本は、最大の「自己実現」であり、だれもが持っている「承認欲求」を満たしてく
れます。

 

どんな人も、人に教えるときには嬉しそうな顔をしています。

私の長女は介護の仕事に就き、体を動かせない重度のお年寄りの面倒をみているのですが、
お年寄りが一番喜ぶのは「何かを教えるとき」だそうです。
お年寄りは自分が今まで経験したこと、学んだことをだれかに伝えたいと思っています。
それを教えてほしいといわれたとき、とても喜びます。

 

だれかに何かをしてあげて感謝されるのは、人間の大きな喜びなのです。

 

「本とは何ですか?」という質問をされたとき、私はこう答えます。
「あなたがどうしてもだれかに伝えたいことです」
これが一番、シンプルな答えです。

だれでも、ひとつくらいは「価値ある伝えたいこと」を持っています。


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