自分の価値は自分ではわからない ~最も身近なところに本のテーマは眠っている

本にはテーマが必要です。テーマとは、「あなたがだれかに伝えたい」ことです。
「私は何の長所もないから本は出せない」と尻込みする方がたくさんいます。
また、「私は仕事しか取り柄がないけど、今の仕事が嫌でたまらない」という人も
います。しかし、ちょっと待ってください。 
あなたが、今の仕事に価値を感じていなくても読者は違うかもしれません。

 

『社長を出せ!』(川田茂雄 宝島社)という本が50万部売れました。作家は、消
費者相談室の職員で、20年間お客さんからの苦情処理に追われていました。
ほとんどの大きな会社にはクレーム処理係がいます。そして、多くの係員は、毎日、
お客さんに謝り続け、「自分の仕事には価値があるのか」わからなくなっています。
しかし、その内容を本にしたら、ものすごい価値があったのです。

その価値をお金に換算することも可能です。定価1300円の本が50万部売れ、印
税を10%もらったら6500万円もの大金が入ってきます。

 

だれもが価値を持っています。
その価値は出版によって初めて世の中に認められるのです。

 

もうひとつ、例を紹介しましょう。私が会長を務めるNPO『企画のたまご屋さん』
から出た本で、『天使のラストメッセージ』(松原ななみ ディスカヴァー・トゥ
エンティワン)という本が5万部くらい売れました。

 

作者は、普通の看護婦さんです。
終末医療の現場で働いていた彼女は、自分が看護した患者さん16人が天国へ旅立っ
たときに、自分の気持ちを詩やエッセイに書き残しました。
本文は、「生きること」「他人への思いやり」「家族の大切さ」「尊厳死」などの重
い内容でありながら、その文章からは優しさが伝わってきます。
 
人の命を看取る看護婦さんという立場だからこそ、命の尊厳を綴った感動の本がで
きたのです。美しい写真が添えられたこの本は、天国に逝(い)った患者さんたちにと
って何よりのレクイエムです。

 

このように、私たちはだれもが主人公として自分の人生を生きています。
人生のテーマを持っていない人、本が書けない人はひとりもいないはずです。

 

本の著者というポジションは、業界でナンバーワンの人や、オンリーワンで成功し
ている人たちが独占するものではありません。
ごく普通の中学生でも、平凡な看護婦さんでも、企画の切り口さえすばらしければ
読者を感動させる本は書けるのです。
また、本のジャンルも関係ありません。
ビジネス書やノウハウ書や実用書だけが売れる本ではありません。
インタビュー集でも、エッセイでも、ベストセラーを作ることはできるのです。

 

あなたが今までやってきたことを客観的にながめてください。
何をテーマに本を書いたら読者が興味を示すかを考えてください。
自分では取るに足らないものでも、読者にとっては大きな価値があるのです。

一番身近なテーマが、今、あなたが働いている職場にあったり、今やっている仕事
だったりします。しかし、それ以外にもあなたはたくさんのテーマを持っています。

 

あなたの中に埋もれている宝をしてください。
その宝は確実に存在します。「宝がある!」と信じてください。
あとは、わくわくしながら掘り出すだけですよ。


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