読者ターゲットは「探す」のではなく「作る」

2016年11月14日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■読者ターゲットは2つしかないというウソ

Q,なぜ、売れる本と売れない本があるのでしょうか?

A,多くの人が買う本と、だれも買わない本があるからです。

本を買ってもらいたい人を、読者ターゲットと言います。
吉田は、出版プロデューサーなので、
読者ターゲットを以下のように分類しています

1,男性なのか、女性なのか?
2,年代は?
3,職種は?
4,書店でどの棚に置かれるか?
5,ターゲットは広げたほうがいいか、狭めたほうがいいか?

以前、「釣堀の法則」を説明しましたが、
たくさんの釣り人が釣り糸を垂れている釣堀は、
たくさんの魚がいるのでだれでも釣れます。

逆に、だれも釣り人のいない釣堀は魚がいないわけで、
こんな釣堀に糸を垂らしてはいけません。

この魚が、いわゆる「読者」です。

通常、読者ターゲットは、2種類あります。
1,メインターゲット
2,サブターゲット

メインターゲットとは、別名、「コアターゲット」とも言って、
あなたの本を買ってくれるもっとも確実なファン層のことです。

極端な話、あなたの本が、必ず3000部売れるならば、
どんな出版社も本を出してくれます。

つげ義春という漫画家を知っているでしょうか?
「ねじ式」が代表作ですが、彼が本を出せば数万部は売れます。

それは、全国に、つげさんの熱烈なファンが数万人いて、
必ず、購読してくれるからです。
実は、コアファンを持った著者が一番強いのです。

サブターゲットとは、メインターゲットの回りに位置する人たちです。
たとえば、「負け犬の遠吠え」(講談社)という本が
ミリオンセラーになったことを覚えていますか?

この本のメインターゲットは、
「30代、独身、子どものいない」OLです。

この本のサブターゲットは、30代という小さな輪を取り巻く、
20代40代の大きな輪です。
中学生の時に、数学の時間で習った、
円の「集合体」をイメージしてください。
職業もOLだけではなく、学生や主婦層も含まれてきます。

メインターゲットとサブターゲットの違いがわかってもらえたでしょうか?
出版社は、この2つのターゲットを狙って本を出しているのです。

ところが、これ以外にも第3の読者ターゲットがあるのです。

Q,第3の読者ターゲットとは何でしょう?

■トリビア族がベストセラーを作る

A,第3の読者とは、「潜在読者」です。

潜在的な読者層は、さらに2つに分類できます。

1,時代に踊らされる人
2,にわかマニア

順に解説していきましょう。

時代に踊らされる人とは、すでにこのメルマガで解説しましたが、
ベストセラーが出たときには、行列を作って本を購入する人たちのことです。
別名、「行列族」と言います。

「バカの壁」(新潮社)がブームになってから
購入した人たちは、みんな行列族です。

もうひとつ、重要な潜在読者として、
「にわかマニア」がいます。

具体例で説明しましょう。
もう10年も前のことですが、「間取りの手帳」(リトル・モア)が
とても売れたことがあります。

この本は、非常に変な部屋の間取りばかりを集め、
それを1行で解説してある本です。
一種のマニア本ですが、日本には、
「間取りマニア」はひとりもいませんでした。

しかし、この本は小さな出版社から出たのにも関らず、
異例なほど売れました。

また、吉田の経営する編プロ天才工場で、
踏み切りの写真集を作ったことがあります。
「日本の珍珍踏み切り」(東邦出版)という本ですが、
これまた、日本には、「踏み切りマニア」はいません。

ところが、この本も何度も重版がかかっています。

Q,なぜ、間取り本や踏み切り本が売れたのでしょうか?

A,「トリビア族」が購入したからです。

「トリビア族」とは、吉田が作った造語です。
普段、本を読まないのですが、
おもしろいことには興味を惹かれる人たちのことです。

この「トリビア族」が支持して、
ベストセラーになった本はたくさんあります。

「トリビアの泉」(講談社)が有名ですが、
ひとつだけ吉田のお勧めの本を紹介しましょう。

「全日本顔ハメ紀行」(新潮社)です。

「顔ハメ」とは、日本全国の観光名所にある衝立で、
顔の部分だけ丸く切り取ったボードのことです。
この本も驚くほど売れています。

「顔ハメ」の本を読めばつくづくわかります。
読者ターゲットは、自分で作ることが可能なのだと。

出版愛 吉田浩