1粒で2度おいしい図解本

2016年10月11日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■なぜ、図解本が大量にベストセラーになったのか?

今回は、「図解本」でベストセラーを作るという手法について語ります。

皆さん、2001~2002年頃、「図解でわかるシリーズ」という
大判サイズの本を日本中の出版社が続々と売り出し、
たくさんの本がベストセラーになったことを覚えていますか?

吉田の記憶では、図解本の一番最初の仕掛人は、
三笠書房の若手女性編集者です。(吉田の知っている方です)
最初に出た本が、コレでした。

・図解 「儲け」のカラクリ インタービジョン21 (三笠書房)

この本は、数十万部売れました。
この本が出たとき、吉田は「やられた!」と思いました。
非常にうまい作りだったです。

何がうまいかというと、「民度」が低かったのです。

「民度」については、すでにこのメルマガで取り上げました。
「民度が低い」とは、難しい本を、
わかりやすく、おもしろく、深く、表現することです。

同時期に、三笠書房で出版され、ベストセラーになった本はたくさんあります。

・図解 人生がうまくいく人は図で考える 久恒啓一
・図解 成功ノート 神田昌典監修
・図解 一日10分で右脳を鍛える本 七田眞

Q,では、なぜ、図解本は売れたのでしょうか?
  図解本の特徴を3つ挙げてください。

A,1,ビジュアルで展開する2ページ構成だった。

 ヒジュアルとは、図形、イラスト、マンガ、グラフ、統計データ、
 フローチャート、写真などのことです。
 1項目が見開き2ページで完結していることもわかりやすい要因でした。

  2,大判サイズで100ページの本だった。

 図解本の大きさは、ほとんどB5サイズかA4サイズでした。
 しかも、ページ数はたったの100ページ。
 ページの半分は図解ですから、実際に読むページは50ページです。

 これが、普段、本を読まないサラリーマンやOL層に支持されました。
 100ページの本でも内容は濃いし、
 1冊の本を読んだという読後感が充分に味わえたのです。

  3,コンビニで売られた。

 これが図解本がもっとも売れた最大の原因です。
 たとえば、全国にあるセブンイレブンの店舗数は1万店以上。
 同じく、ファミリーマート、ローソンの店舗数も1万店以上。
 図解本は、初版5万部からスタートすることもざらにありました。

■1冊の本で2回ベストセラーを作るおいしい話

その後、「図解本は売れる!」という定説が生まれ、
ムックコードを持っている出版社は、こぞって図解本を出しました。

 ※ムックコードについて
 専門的な話ですが、ここで覚えてください。
 通常、出版社は、本の種類によって、発売許可を得なくてはなりません。
 単行本、文庫、新書、ムック、雑誌の出版コードがあり、
 ムックを販売できる出版社は限られています。

 ※ムックについて
 「ムック」とは造語で、雑誌形式の書籍のことです。
 「マガジン=雑誌」と「ブック=本」を掛け合わせて作られました。
 ムック本で一番有名なのは、宝島社ですね。

しかし、図解本があまりに出回りすぎると、
次第に、読者から飽きられてきました。

図解にする必要のないどうでもいい本を
図解本として発売するようになっていったのです。
「悪貨が良貨を駆逐する」の例えどおりですね。

さて、困った出版社は考えました。
そして、もっと確実に売れる図解本があることを思いついたのです。

Q,もっと売れる図解本とは何でしょうか?

A,過去にベストセラーになった本の図解版を出したのです。

この具体例ですが、枚挙にいとまがないので、
今、吉田の書棚にある本だけ紹介します。

・図解 思考は現実化する ナポレオン・ヒル (きこ書房)
・図解 夢をかなえる「そうじ力」 舛田光洋 (総合法令出版)
・図解 ハワイプチ富豪の成功ノート ヒロナカジマ (アスコム)

これは、出版社にとって大変「おいしい」手法でした。
なぜならば、

1,すでに、完成原稿がある。
2,すでに、売れた実績がある。
3,すでに、読者がついている。

という3段論法が成り立ち、出せばたちまち数万部売れてしまいました。
「貯金」(=過去に出したベストセラー)のある出版社にとっては、
笑いが止まらなかったでしょう。

余談ですが、図解本は、図解書だけではなく、
図解的発想そのものを論ずる本もベストセラーになっています。

・図解する思考法 西村克己 (日本実業出版社)
・図で考える人は仕事ができる 久恒啓一 (日本経済新聞社)

これからは、図解でベストセラーを出すという方法も学んでください。

来週は、「図解本」よりもっと民度の低い本の紹介です。
そして、「図解本」よりもっと民度が低いために、
それらの本はミリオンセラーになっています。

Q,さて、その本とはなんでしょうか?
  本のジャンルでお答えください。

A,答えと解説は次回です。ご期待ください。