ベストセラーはかけ算で生まれる

2016年06月20日

こんにちは、出版業界のジャイアン、吉田浩です。

■商品の売り方はたし算、書籍の売り方はかけ算

普段、私たちがものを売るときには、
商品を仕入れて、仕入値より50%くらい高くして売ります。
差額が、儲け、というわけです。

そして、
「この商品が一番売れたから、この商品をもっと仕入れよう」
という考え方で、人気商品をどんどん仕入れていきます。

このように、商品販売の基本は、たし算なのです。

書籍も商品の一部なので、通常はたし算で売っていきます。
「今は、株式の本が売れ筋なので、株式の本を作ろう」
と、出版社は考えたりします。

ところが、ベストセラーを出すには、
たし算では、絶対にダメなのです。

ベストセラーは、かけ算で成り立つのです。

著者が無名の場合は、「基本数字」を1とします。

著者が有名であればあるほど、基礎数字は、
2,3,4,5,6,7……と増えていきます。

たとえば、単行本の平均的な
売れ行き部数を5000部としましょう。

著者が無名な場合は、1×5000部=5000部
著者が有名な場合は、5×5000部=25000部となります。

たったひとつの基本の数字が違うだけで、
本の売れ行きは、天と地ほども違うのです。

「私は、今度、初めて本を出すんですけど、
まったく無名なので、本が売れないってことですね?」
と、嘆く著者もいるかもしれません。

でも、大丈夫。
監修者に、とても有名な方を起用するという手もあります。

また、今、話題の人に、推薦文を書いてもらい、
それを本のオビに載せるという手もあります。

かけ算の基本数字を1から2に変える方法はたくさんあるのです。

■1×1×1=ずっと1

それでは、ここで読者の皆さんにも、
かけ算のベースを考えてもらいたいと思います。

Q,ベストセラーのかけ算です。
 カッコに入る言葉を見つけてください。

ベストセラー=(著者の知名度)×(監修者の知名度)×
(推薦者の知名度)×(   )(   )(   )

A,カッコ内には、こんな要素が入ります。

(タイトル)
(企画力)
(話題性、時代性)
(ブーム、時期的なもの)
(出版社の営業力)
(出版社の広告力)

もちろん、基本的な要素も忘れないでください。
(内容の面白さ)(構成力)(文章力)などです。

特殊な例として、
(本の装丁)(本の定価)などもあります。

(ビジュアル化)と書いた方はいますか?
大正解です。

(紙面のデザイン)を工夫したり、
(マンガ化)を図ることによって、
170万部売れた本があります。
『きっぱり!』(幻冬舎)がそうですね。

そして、最近、もっとも影響力のある要素が、
(著者のネットワーク)です。

以前、糸井重里さんや、ゆうきゆうさんの
例を紹介しましたが、ネットワークを持っている著者は、
いきなり基礎数字が数倍跳ね上がるのです。

1×1×1は、ずっと1であることを理解してください。

基礎数字を変えないと、
ベストセラーは絶対に生まれないのです。

出版愛 吉田浩